読み物:日本昔話

4. 桃太郎 (ももたろう)
Return to Reading page

Printable version

昔々 (むかしむかし) 、山の近くの小さい (むら) に、親切 (しんせつ) (なか) のいいおじいさんとおばあさんが住んでいました。毎日、おじいさんは山へ木を切りに、おばあさんは川へ洗濯 (せんたく) に行きました。

ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上 (かわかみ) から大きい桃がドンブラコ、ドンブラコ、と流れてきました。
「あまい桃なら、こっちへ来い!まずい桃ならあっちへ行け!」
とおばあさんが言うと、その大きい桃はおばあさんの方へ (なが) れてきました。おばあさんはその桃を (ひろ) って、ヨッコラショ、ドッコイショ、と家に持って帰りました。

その夜、おじいさんとおばあさんが桃をまな (いた) の上にのせて切ろうとすると、桃はポカッとわれて、中からかわいくて、元気のいい男の赤ちゃんが「オギャーオギャー」と生まれました。子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、とてもうれしくなって、
「桃から生まれたから、桃太郎という名前にしよう!」
と言って、桃太郎を自分達の子どもとして育てることにしました。桃太郎はたくさん食べて、スクスク育ちました。やがて、力持ちで、強くて、かしこくて、親切な男の子になって、毎日おじいさんとおばあさんの手伝いをするようになりました。

そのころ、鬼ヶ島 (おにがしま) という島から来た乱暴 (らんぼう) (おに) 達に色々悪い事をされて、村人 (むらびと) はとても困っていました。そんなある日、桃太郎がおじいさんとおばあさんに言いました。
「おじいさん、おばあさん、今までぼくを育ててくださって、ありがとうございました。おかげさまで、ぼくはこんなに強くなって、鬼と (たたか) えるようになりました。お礼にぼくが鬼ヶ島に鬼退治 (たいじ) に行ってまいります。」

そして、おばあさんに日本で一番おいしいきび団子 (だんご) を作ってもらうと、それと (かたな) を持って、はちまきをして鬼ヶ島へ出かけました。少し行くと、「ワンワン」と (いぬ) () () められました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、これからどこへいらっしゃるんですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんですよ。」
「それでは、そのきび団子をひとつ下さい。そして、私を桃太郎さんの家来 (けらい) にして、連れて行ってください。」
「どうぞ、どうぞ。きび団子を食べて、一緒 (いっしょ) に鬼退治をしてください。」
犬はきび団子をもらって、桃太郎の家来になりました。桃太郎と犬が少し行くと、今度は「キャアキャア」と (さる) に呼び止められました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、これからどこへいらっしゃるんですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんですよ。」
「それでは、そのきび団子をひとつ下さい。そして、私を桃太郎さんの家来にして、連れて行ってください。」
「どうぞ、どうぞ。きび団子を食べて、一緒に鬼退治をしてください。」
猿もきび団子をもらって、桃太郎の家来になりました。桃太郎と犬と猿が少し行くと、今度は「ケーンケーン」とキジに呼び止められました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、これからどこへいらっしゃるんですか?」
「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんですよ。」
「それでは、そのきび団子をひとつ下さい。そして、私を桃太郎さんの家来にして、連れて行ってください。」
「どうぞ、どうぞ。きび団子を食べて、一緒に鬼退治をしてください。」
 キジもきび団子をもらって、桃太郎の家来になりました。こうして桃太郎は犬、猿、キジを連れて鬼ヶ島に鬼退治に行きました。


桃太郎達が鬼ヶ島に着いてみると、鬼達は桃太郎の村からぬすんだ宝物 (たからもの) やごちそうをならべて、酒盛 (さかも) りの最中 (さいちゅう) でした。桃太郎は犬と猿とキジに 「さあ、みんな、がんばって鬼を退治しよう。それ!」
(さけ) びました。

鬼達は犬におしりにかみつかれて、猿に背中をひっかかれて、キジに空からくちばしでつつかれました。そして桃太郎も、刀をふり回して大あばれしました。その強いこと強いこと! とうとう鬼の親分 (おやぶん) が、
「まいったぁ、まいったぁ。助けてくれぇ!」
と言って、鬼はみんな () けてしまいました。

桃太郎と犬と猿とキジは、鬼から取り上げた宝物やごちそうを持って、元気よく村に帰って、村人に
「みなさん、どうぞ、このごちそうを召し上がってください。そして、この宝物をお使いください。」
と言いました。おじいさんとおばあさんは、桃太郎の元気な姿 (すがた) を見て () いて (よろこ) びました。

それからずっと、おじいさんとおばあさんと桃太郎と村人は、しあわせにくらしました。